月ヶ瀬健康茶園

文明語る

立体的な形状のフルリーフ紅茶について

冷涼地でつくる紅茶の特徴を活かす

収穫した新芽を紅茶に加工していく時、香りが出る工程が二回あります。一回目は収穫した新芽を萎らせる「萎凋(いちょう)」工程です。新芽が萎れると、甘酸っぱいリンゴの皮のような爽やかな香りが出ます。二回目は「発酵」工程です。萎れた新芽を揉むことで発酵が始まり、新芽が紅色へと変化することで香りが出てきます。紅茶製造時に両方の工程で良い香気が発揚することは稀で、太陽の光を強く浴びる等して育ったお茶は発酵して紅くなることで特徴的な香りが出る傾向があるのに対して、日照量が少ない等ゆっくりと育ったようなお茶は萎凋で特徴的な香気が発揚する傾向があります。自園での多品種を比較しながらの紅茶づくり、そして世界各国の紅茶産地を訪問する中で、「奈良・月ヶ瀬」のような冷涼な気候・風土を活かした特徴的な紅茶をつくるには、萎凋香を活かすことを意識した製茶が大切だと感じるようになってきました。また、2010年に輸入した手摘みでの少量生産用に使用していた中国製小型揉捻機は茶葉が破砕しにくい構造になっていたこともヒントになり、機械収穫で製茶する揉捻工程でも、萎凋した新芽が、なるべく破砕しないよう揉み込み、爽やかな萎凋香が残されるような作り方に改良しました。その結果、新芽「まるごと」立体的な形状の紅茶が出来るようになりました。

揉捻工程で揉み込み、しっかりと撚られた茶葉

揉捻工程で揉み込み、しっかりと撚られた茶葉

 

製茶工程ごとに最適な状態で作り上げた成果がそのまま表れる立体フルリーフの紅茶

紅茶をつくるとき、新芽の収穫から乾燥まで、一つ一つの工程において最適な状態で進められていくことで、フルリーフの紅茶が出来上がります。具体的には、適期に収穫した新芽の熟度だからこそ萎凋すると均一に萎れ、最適な水分量になったタイミングで萎凋を止めて新芽を揉んでいくことで、芽が破砕されず綺麗に撚れていきます。言い換えれば、ごまかしが効かず、製茶工程ごとに最適な状態で作り上げた成果がそのまま表れるのが立体フルリーフの紅茶なのではないかと思います。

乾燥まで仕上げた状態の立体フルリーフの紅茶

 

品種や実生茶(在来種)ごとの特徴的な香味の違いを活かす紅茶

奈良・月ヶ瀬の山間に点在する茶園には、20種類以上もの品種や実生(在来)茶が育っています。その中で「べにひかり」「べにほまれ」等のアッサム系品種は、製茶の際、発酵工程でも特徴的な香気が発揚するものもありますが、ほとんどの品種においては萎凋工程で、それぞれに異なる特徴的な香気が出る傾向があります。そうしたことから、萎凋香を活かす作り方に改良した結果、品種や実生茶(在来種)ごとに異なる特徴の違いを、これまでより繊細かつ個性的に感じて頂けるような紅茶が出来るようになりました。

 

淹れ方と風味の傾向

新芽「まるごと」立体的な形状の紅茶は、新芽の傷口が少なく、しっかりと揉み込んでありますので、煎が効き、抽出には時間がかかりますが、雑味なくすっきりと飲んで頂くことができます。熱湯を注ぐと葉脈を伝い、時間をかけて製茶した工程の反対の過程を辿りながら、ゆっくりと茶葉が開いて茶液が抽出されていきます。茶葉が開き切る空間のあるポットをお使いください。