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葛の根をヒントに、山間冷涼地の急斜面でつくるお茶の特徴を考える

2017年の年明けに吉野の中井春風堂さんの葛会に参加して以来、葛という植物を意識して観るようになりました。いっぽう、ちょうどこのタイミングで今冬、「老間」茶園隣で、笹や蕨そして葛などが蔓延っている耕作されていない畑を借りて、新たに種を植えようとしているところでした。約20年間、人の手が加わっていないという条件の場所で、葛という植物を意識しながら、草刈り、雑草の抜根などの作業を進める中、平らな面より、土手の斜面で生える葛のほうが、ツル(株元)が太く、根も太くて長いものが育っている傾向にありました。この太い根の部分こそが、デンプン質がたくさん蓄えられていて、本葛をつくることが出来る部位となります。

 

放棄畑の再生手順

 

葛根

 

そこで、平らな面より斜面に生える葛のほうが、根が太くて長いものが多く育っている理由について、次のように考えてみました。

 

①地表面の葛の葉が光合成をおこなえる環境であることで樹体(ツルや根)が生長して大きくなることができる。

【平らな面の葛は、地表部が笹や蕨で覆われて競合しあい光合成を行うための生存競争が激しいのに対して、斜面の葛はツルが大木に巻き付いて高くまで伸びて、自らが光合成しやすい環境をつくっていると考えました】

 

②根は重力の方向に伸びるため、急斜面になればなるほど根は長く伸びることができる。

【平らな面と急斜面とで、同じ深さの耕土と仮定した場合ですが、根は地球の中心に向かって(重力の方向に)伸びるため、急斜面になればなるほど、根が長く伸びても地表面に近い状態が続き酸素が供給されやすく、かつ、耕土が深くなり、根が長く伸びることができる生育環境にあるためと考えました】。

環境の違い 根

急傾斜地と平坦地の根の伸び方を考える

 

このような仮説をたてている時、以前、茶生産青年協議会の闘茶全国大会で国内の産地別の煎茶を飲み比べた時、「大和茶は餅の表面に着いている白い粉(片栗粉)の風味をかすかに感じる」と覚えたことを思い出しました。片栗粉はデンプンであり、葛根と同じ成分です。このような発想の経緯から、山間冷涼地の急斜面でつくるお茶が、どのような特徴になるのかを考えてみました。

葛の根から学ぶお茶づくり

①と②より、平坦地より陽当りの良い(急)斜面という茶園環境(茶山)のほうが、根が長く伸びやすい生育環境であると考えられます。また、挿し木で育つ品種茶より種で育つ実生(在来)茶のほうが、本来の根(直根)として育つものと考えます(茶園を品種茶園と実生茶園に分類するより)。

また、春、新茶の収穫時期が遅く、年間の収穫回数が少ない{=地上部が生育できる期間が短い=休眠期間(冬)が長い}生育環境であるということは、樹体(幹や葉そして根)が貯蔵栄養分(デンプン等)を蓄える期間が長くなり、貯蔵栄養分が一番茶の生育や品質に及ぼす影響が高くなると考えます。

さらに冬季、厳寒期に寒くなる生育環境であるということは、耐冬性を高めるためによりいっそう茶樹は樹体(茎や葉そして根)の含糖(デンプン等)率を高めると考えます。(寒茶&赤番づくりから学んだことより)

 

自然栽培において、「その土地の力を最大限に発揮できる茶園環境をつくっていくということ」は、とても重要であると思います。今回、葛の根をヒントに考えたことは、「どんな場所に」「どんな茶樹を」「どのように植えるか」という茶園環境の根底そのものでもあります。

いっぽうで、2012年以降、奈良・月ヶ瀬の自然のリズムで茶樹が育つことを意識した自然栽培・有機栽培に切り替えて、年々「炭水化物由来の甘い香味」を感じられるようなお茶に変化してきていることを実感しています。葛の根をヒントに「根≒イモ」を育てるという観点からも意識した自然栽培で、「山間冷涼地の急斜面でつくるお茶」の特徴を、さらに多角的な視点から観ていきたいと考えています。

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