月ヶ瀬健康茶園

文明語る

紅茶班通信No.02(2007年4月)

第二号です。昨年5月に初めて紅茶用品種でつくった紅茶を、今冬の第二号紅茶班通信で案内させて頂く予定でしたが、出来なかったことをお詫び致します。2004年3月に植えた紅茶用品種「べにふうき」「べにひかり」「べにほまれ」の幼木から、昨年5月ほんの少しの紅茶ができましたが、熟成しても思っていた風味にならなかったためです。原因としては、幼木園で収穫した新芽が大小不揃いだったため、萎凋(いちょう)という最初の製造段階で新芽を均一に萎(しお)らせることが出来なかったためと考えております。新芽の柔らかい部分と、硬化した大きな葉とでは、萎れるまでの時間が異なるのです。「紅茶の製造は萎凋で決まる」というほど、萎らせる工程は重要なので、まずは茶園で品質の良い新芽が収穫できないと製造も始まりません。大きさの揃った(芽揃いの良い)新芽を機械で収穫できるようになるまであと数年かかりますが、手摘みなら揃った新芽だけを収穫できます。

第一号紅茶班通信では「新しくできる3品種の紅茶を、どのように企画していくべきか」がテーマでした。そんなことを思いながら熟慮した結果、品種別に「べにふうき」と「べにひかり」の2種類をつくり、さらにそれぞれでオーデナルティ(日常に飲むお茶)「機械刈り」と、スペシャルティー(特別な時に飲むお茶)「手摘み」という2種類に分けます。そして春摘みと夏摘みは品種ごとにブレンドします。このように4種類の新しい紅茶をつくる予定です。そこで今冬は、まず手摘み紅茶を作る準備を進めました。手摘みでの収穫だと、機械刈りのように一日に何トンも収穫できないため、小さな機械が必要です。そこで新芽が4kg程入る小さな揉捻機(じゅうねんき=お茶を揉む機械)を中国より取寄せることができました。参考ですが、通常の機械刈り用の揉捻機は新芽が60kg程も入る大きさです。

輸入した手摘み用小型揉捻機と長男(円い桶の直径は約20cm)。2006年冬

輸入した手摘み用小型揉捻機と長男(円い桶の直径は約20cm)。2006年冬

 

紅茶品種 べにふうきの芽 2006年5月 井口山圃場

紅茶品種 べにふうきの芽 2006年5月 井口山圃場

残念だったこともありました。「べにほまれ」品種だけ、裂傷型凍害という致命的な寒害に遭ったことです。この被害は、例えば水道管の中の水が凍って膨らんで、パイプが破裂してしまうのと同じようなもので、茶の木の幹の皮が剥けてしまいます。この被害は茶の木の冬支度が出来ていない晩秋や、春の訪れを感じて茶の木が吸水し始める初春の頃に、氷点下4~5℃まで下がると発生しやすく、茶の木の耐凍性が出来ている厳寒期には発生しません。この「べにほまれ」は、近年よりも寒かった40年前に奈良・月ヶ瀬でもたくさん栽培されていたため、裂傷型凍害の心配はしていませんでした。しかし凍害が起こってしまったのは、近年のように暖かい秋が続いたあと急激に冬になるなど、気温較差の大きい異常気象の影響があるのかも知れません。紅茶用品種は、すべて寒さに弱いとされていますが、致命的な凍害を受けたのは1万本以上植えた中で「、べにほまれ」約1500本だけだったので、よかったと思います。

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裂傷型凍害べにほまれ 株元の幹の皮が剥けた状態

 

紅茶用品種でつくる紅茶のこと

今季、手摘みで最高の紅茶ができるよう取り組みます。紅茶品種の特徴をしっかりと出したいです。(茶園の畝間には、雑草抑制、乾燥防止、土壌流亡防止、養分補給などのため、ススキなどの下草を敷き詰めています。)

緑茶用品種でつくる紅茶のこと

緑茶用品種の新芽からの紅茶製造を始めて今年で7年目。引き続き、「春摘み」は爽快な甘味ある紅茶に、「夏摘み」は発酵による甘味のある紅茶に、そして「春摘み」「夏摘み」ともに渋みのない和風味が持ち味になるよう今後も取組み続けます。

2007年4月 月ヶ瀬健康茶園 岩田文明